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最高裁判所第三小法廷 昭和30年(オ)467号 判決 1956年10月09日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人鈴木義男、同河野太郎の上告理由について。

所論(一)は、原判決が有効と認定した本件賃貸借契約をもつて借家法一条の二、二条の脱法行為であつて、賃借人に不利な契約であり無効であると主張する。しかし原審は適法な証拠調を行つた後、まず本件のように従来存続している家屋賃貸借について一定の期限を設定し、その到来により賃貸借契約を解約するという期限附合意解約をすることは、他にこれを不当とする事情の認められない限り許されないものでなく、従つて右期限を設定したからといつて直ちに借家法にいう借家人に不利益な条件を設定したものということはできないと判示し、この見解は相当であつて借家法に違反するところはない。そしてさらに原審は、本件賃貸借契約においては右期限の設定を不当とする事情を認めるに足る証拠がないとし、結局右期限の到来によつて合意解約の効力を生じ本件家屋の賃貸借はすでに終了したものと認定したのであつて、原判決引用の証拠その他記録を調べてみても、この認定を誤りとすることはできない。従つて原判決には所論のような法令違反はない。所論(二)は、多くの事実を述べて本件賃貸借契約が無効であることを強調するが、その前提とする事実は原審の認定しないところであり、結局所論は独自の見解に立つて原判決の認定を非難するに帰し採用することはできない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 垂水克己)

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